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議事録

2019年3月定例会 討論

会派を代表して、議案第103号平成30年度高松市一般会計補正予算(第7号)中、低所得者・子育て世帯向けプレミアム付商品券事業費1億8,404万9,000円、繰越明許費1億8,404万9,000円について反対討論を行います。

国は10月の消費税増税に合わせて、住民税非課税の世帯と2歳以下の子供がいる家庭を対象に、プレミアム付商品券を発行します。利用者は、1枚当たり400円を払うと25%分を上乗せされた額面500円の商品券を購入でき、10枚セットの4,000円──額面は5,000円から購入可能で、上限は1人当たり2万円──額面は2万5,000円です。上乗せ分の5,000円を公費で負担するというものです。

商品券を使えるのは、発行自治体にある小売店、利用できるのは2020年3月までの半年間を原則としています。購入する際の引きかえ券は、自宅に郵送され、買った分を自治体が把握できるようにするということです。

国は、これまで多くの同様の商品券などの給付を行ってきました。バブル崩壊後の不況が続いていた1999年、子育て世帯や高齢者に2万円分の商品券──地域振興券、リーマンショック翌年の2009年に全世帯対象の定額給付金、そして、直近では2014年の消費税率5%から8%へのアップを受け、2015年にプレミアム商品券といったぐあいです。

その効果はと言うと、地域振興券は約6,000億円を投じ、消費の押し上げ効果は約2,000億円、定額給付金は約1.9兆円を配り、効果は約6,000億円と、いずれも国の支出の3割程度にとどまっています。効果の推計は、内閣府・総務省などによるものです。

さらに、今回と類似する2009年のプレミアム商品券は、国が地方に配る交付金をもとに平均23%の上乗せをした商品券や旅行券が各地で発行され、9,511億円分が使われましたが、内閣府の推計でも、実質的な消費を喚起した効果は1,019億円と、政府が予算計上した2,500億円の半分以下にとどまっています。

このように、経済的な効果に疑問があるだけではなく、今回のプレミアム付商品券に関しては、特にプライバシーの問題と自治体の負担の問題、実際の生活者の視点の欠落があります。

対象者を2歳以下の子供がいる世帯と低所得者世帯に限定していることで、さきの議案質疑に対する答弁では、商品券の購入可能な方は、低所得者だけではなく、子育て世帯も含んでおり、この商品券を使用することにより、直ちに所得の状況が明らかになるものではない。また、孫の商品券を別居している祖父母が使用しても、社会通念に照らし、特段の問題はないとのことでした。これらは、いずれも国が示しているQ&Aに基づくものです。しかし、孫の商品券を別居している祖父母が使用して、子育てに関係のない、自身が必要とする物品を購入することは、子育て世帯への支援でも何でもありません。それをよしとしている時点で、この政策は意味をなし得ていません。

また、商品券を作成し、配布し、管理するコストが莫大にかかります。商品券のデザインを考え、印刷し、それを自治体などが販売して、使った分はお店が管理する必要が出てきます。自治体と小売店の負担は、相当なものになります。

最後に、欠落しているのは、生活者としての視点です。低所得者と一くくりにされていますが、対象は住民税非課税世帯、障害者・未成年者・寡婦で、前年中の合計所得金額が125万円以下の人、独身の会社員では年収約100万円以下などとなります。月収が10万円を切るという大変厳しい状況に置かれている方が、煩雑な事務手続を行ってまで、額面5,000円のために4,000円を支払うでしょうか。まとまったお金を手にすることの大変さをわかっていない人が考えた政策だということがよくわかります。

自治は、徹底して市民から出発するものです。国の権力者やエリート官僚が決めた方向へ国民を誘導するのではなく、私はこれをやりたい、こう生きたい、こんな町にしたいという市民一人一人の思いから出発するのが自治です。自治体が国の打ち出す政策を実行していく役割しか果たさないのならば、自治体は必要ありません。自治体は徹底して市民と向き合い、国家からではなく、生活者である市民から出発する社会をつくるためにあるのです。

今回の政策は、この自治の理念と正反対であり、消費の押し上げ効果も期待できるものではないこと、対象者のプライバシーが守られないこと、さらに、自治体に相当の負担がかかることから、当予算について反対します。

以上で反対討論を終わります。


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