2016年12月定例会 反対討論(意見書)
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市民派改革ネットの太田安由美です。会派を代表いたしまして、ただいま議題となっております議員提出議案第6号地方議会議員の厚生年金への加入を求める意見書について反対討論を行います。 議員年金制度の廃止で退職後の生活が不安定になり、議員のなり手が減少しているとの提案理由に驚き、悄然としています。 従前の地方議員年金は、1962年、地方公務員共済組合法に基づく強制加入の年金制度が規定され、その後、2011年に制度が廃止されました。 地方議員年金の廃止といっても、制度廃止の時点で既に議員年金を受給していた人には、引き続き議員年金が支給されていますし、現職議員で議員年金の受給資格を有する在職12年以上の議員も、退職年金または退職一時金を選択することができるとされています。 地方議員年金制度の完全廃止までには、これからまだ50年ほどかかり、最大1兆3,600億円もの税金が投入されます。 私たち市民派改革ネットは、次の五つの視点から、この議案に反対する理由を述べます。
一つ目、地方議員のあり方、働き方を見直さないで厚生年金加入の法整備を急いでいること。 地方自治法第203条において、議員は常勤職の給与とは区別され、報酬が支給されることが規定されています。厚生年金の加入を求めるのであれば、常勤職ではなく、非常勤という地方議員の身分や働き方を常勤に変える必要があります。 高松市議会では全く議論がなされていませんが、せめて通年議会にしない限り厚生年金加入の議論はできません。
二つ目に、5年前に廃止した特権的な議員年金より税金負担が大きいことです。 2011年5月、全ての地方議員に特権年金があるのは世界でも日本だけ。国民生活と乖離したあしき制度として国会の全会一致で廃止法案が成立しました。 この廃止された議員年金は、議員が支払う掛金が6割、税金4割で運営されており、議員の負担のほうが大きい仕組みでした。 しかし、年金保険料の5割を税金で払わせるというのが、議長会から出されている今回の厚生年金加入案です。だとすると、仮にこれが実現してしまうと、かつての税金4割負担以上の特権的な議員年金制度ということになります。ちなみに、現在の全地方議員を厚生年金に加入させると、国民の負担は毎年170億円ふえると予想されています。これでは、一度廃止したものが形を変えて出てきたとしか言いようがありません。
三つ目に、低投票率や議員のなり手不足を理由に厚生年金加入を求めるのは論理の飛躍であるということです。 議員には4年ごとに選挙があり、身分は不安定で、退職金も失業保険もない、そんな状況で子供や家族を養うことができないという声がありますが、そもそも議員には定年も雇用契約も存在しません。必ずしも金銭のみが人を引きつける要素ではなく、低投票率や議員のなり手がいないことを理由に厚生年金加入を求めるのは論理の飛躍でしかありません。むしろ、低投票率で議会に関心を持ってもらえないことは、私たち議員の責任でもあります。市民に身近に感じてもらえるような議会運営になっていないことや、情報公開・情報発信が活発でないことも議員のなり手がいないことの大きな要因であることを自認すべきです。
四つ目に、国民年金だけでは老後が不安という理論は筋違いであるということです。 国民年金だけで老後保障に不安の残る議員は、被用者以外を対象にした公的な年金制度である国民年金基金や民間の年金に加入することができるのは言うまでもありません。 国民年金では足りず老後が不安だと思うなら、自分の年金をふやす前に、まず、国民年金しかない自営業者など年金弱者のことを考えるのが政治を担う者の役割ではないでしょうか。
五つ目に、住民自治の視点が欠けているということです。 これまでの議員年金もそうであったように、地方自治体の運営に大きくかかわる地方議員の厚生年金の加入による老後保障という案件を住民の意向を無視して求めようとしています。 国会で法整備されるからプロセスとして問題ないという見方もありますが、仮にそうであっても、その後の公費負担は国会の議決を経ていないため、やはりそのプロセスに大きな問題があります。 議員に支払われている報酬や費用弁償・政務活動費など議員の処遇に関することは、その住民負担を明確に示し、住民が納得した上で制度化されるのが自治の基本であることは言うまでもありません。
以上が五つの視点ですが、今後、ますます社会保障費が膨らむことは明白であり、その財源の確保にさらなる負担を市民の皆さんにお願いする立場にいる議員が、自分たちの生活向上や将来不安の改善を訴えることは矛盾しているとしか思えません。みずからを律し、議員の仕事のやりがいを多くの人に伝えていくことが議員のなり手をふやすことにつながります。議会に多様な人材が入ってこない理由が、年金に加入できるかどうかではないことは明白です。 よって、議員提出議案第6号に反対します。